短命な日本の木造住宅事情

皆さんは木造住宅の寿命ってどれ位だと思いますか?
長く暮らせる家づくりガイドによるアンケートでは、ほとんどの方が築40年以上を期待しているという結果が出ています。
当然この私も50年、60年の耐久性はあるだろうと思っていました。
ところが、建設白書によると現状は築26年ほどで解体され、建て替えられているとのこと。
皆さんの期待する40年以上には及ばず、30年未満の寿命である木造住宅が多いというのが現実。
重要文化財などを見ても日本の建築は質が高く、長持ちするものだと思っていたのに・・・。
少しがっかりするとともに、疑問も浮かびます。
なぜ、日本の住宅寿命は短いの?
では何故このように日本の住宅サイクルは短いのでしょうか?
それには3つの理由が考えられるようです。
先ず一つ、戦後の日本には住宅そのものが足りなく、質よりもとにかく量を確保しなければならない時期があったようです。
その間に建てられた住宅は、供給を目的としていたために高品質とは言えないものだったのでしょう。
二つ目は、中古住宅の流通が活発ではないということ。
日本では築15年を過ぎると、建物に関しての評価がほとんどゼロになってしまうと言われています。
家族構成やライフスタイルの変化により今の住まいを売って住み替えようと思っても、中古住宅は売却が難しいことが背景にあるようです。
そうなると売買するよりは取り壊して建て替えたほうがいいとなるのでしょう。
三つ目は、次世代に家を住み継ぐという考え方の家づくりをしてこなかった日本の住宅を、いま求められている長く住むために必要な高性能な住宅にするためのリフォームのしにくさです。
それにより住宅の構造や仕組みが改修や増築に対応できず、壊して建て替えに踏み切る場合があり、約30年程度で解体せざるを得ない状況になってしまったのでしょう。
それでは家が長持ちする条件は?
では、どんな家が長持ちするのでしょうか?
1つは耐久性があること。
しっかりとした材料を使い、丁寧に施工をし、快適に長く住めるよう断熱・気密性を高めた高性能な家づくりをすること。
また、将来を見越した間取りや設備、長く愛せる素材をデザインに取り込むこと。
そして、変化に対応できること。
つまり暮らし方が変化したときに、比較的に簡単な工事で住まいを変えることができるということ。
どの家でも基本的には大幅な間取り変更はできますが、耐震性や耐久性に不安があると工事をするにも躊躇してしまいますよね。
こう見てくると、築30年で解体されている住宅は、建築当初から30年程度住み続けると自然と解体、改修せざるを得ない家づくりがなされてきたと言えそうです。
長持ちする家は必要なの?
日本の住宅は寿命が短いというお話をしてきましたが、長持ちする家は必要でしょうか?
昨今の環境問題から省エネルギーや資源の活用、解体したときの廃材処理が考慮され、長寿命住宅のニーズは高まっています。
長持ちする家というと欧米諸国をイメージする方が多いのではないでしょうか。
欧米の人たちは高性能な住宅を建て、自分たちでしっかりとしたメンテナンスをする。
長く住み続けるために住宅を建てます。
建てた瞬間から住宅の価値が下がっていく日本の住宅と、50年経った中古住宅が解体されずに新築時と変わらぬ価値、時にはそれ以上の金額で売買されている欧米とでは住宅に対する考え方がだいぶ違いますね。
現在、日本でもより豊かで優しい暮らしへの転換を目的として、住宅を長期にわたり使用し続けることで解体による廃棄物を抑制し環境への負荷の低減、また、建て替えに係る費用の削減で国民生活の負担を軽減する基準を設け、長期優良住宅の普及を促進しています。
これにより日本でも資産価値も高まり、住まうあいだも快適に暮らせる住宅のニーズが高まってきています。
その先30年住み続けられる家づくり
30年、更にその先の30年を住み続けられる長持ちする住宅のメリットは沢山あります。
長く快適に住み続けられることができれば安定した生活をおくり、ランニングコストも抑えることができます。
また、予測しにくい将来に対して、選択肢の幅をひろげることができます。
日本の戸建て住宅の約9割が木造住宅であるとされています。
断熱性が低く、木のような調湿機能のない鉄骨系よりも建築コストを抑えることができ、間取りを自由に組みやすいというメリットがあります。
木はもともと自然のものであり日本人とも馴染み深い材料ですから、更に性能が上がり長持ちする家づくりが出来れば、日本の住宅事情も良くなるのではないでしょうか。
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長く快適に住み続ける家づくりの考え方や仕組みをコンサルタントの方をお招きし講演していただいています。これからの家づくりの参考に、ぜひご参加くださいませ。
